03 『のはらうた』について


『のはらうた』は、詩人のくどうなおこ(工藤直子)さんが1984年から刊行している詩集のシリーズです(くどうなおこと のはらみんな/著、童話屋・刊)。のはらに暮らす動物たちの声を「だいりにん」のくどうさんが聞き書きした詩集で、小学校の教科書にも採用されるなど、子どもから大人にまで愛され続けてきました。これまでに5巻の詩集と、アンソロジーや姉妹編などが多数出版されています。



>>のはらうた I:のはらうた|書籍一覧|童話屋



『のはらうた』、そしてその作者である、詩人のくどうなおこさんと出会ったのは、2000年の後半だったと思います。妻が雑誌編集者だった頃に著者としてお世話になったご縁で初めてお会いすることになってから、家の本棚にあった「のはらうた」シリーズをパラパラとめくってみたのが最初でした。既に有名な詩集だったはずなのに、それまで全く知りませんでした。



何の先入観もなく『のはらうた』の詩に初めて接した時の印象は「とっても可愛い!」でした。短いひとつひとつの詩から、のはらの風景がカラフルな色や形として目の前に浮かんでくる。当時の自分の絵の方向性に近いものも感じたし、その風景を描いてみたい!と強く思いました。詩を読んでそんなふうに思ったのは初めてのことでした。


たいていの詩は、詩人が書く言葉や文字の世界の内側で完結していて、そこに新たに別の絵を加えようという気持ちにはならないのが普通でした。でも『のはらうた』の詩の世界は、みんなに開かれている。誰でも心に浮かんだ自分の「のはらうた」を、詩に書いたり、歌を作ったり、絵で表現したり、なんでも自由にできるのです。


詩から浮かぶ「のはらうた」のイメージを、次々と絵にしていきました。それまでイラストはずっと線画で描いてきましたが、作品全体を塗りで描いたのは「のはらうた」の絵が初めてでした。自分にとっても大きな変わり目・チャレンジのタイミングだったんじゃないかと思います。


その後、くどうさんをまじえてみんなでご飯を食べに行くたびに「飲み代」と称して、新作を描いて持っていくようになりました。描きかけや習作なども含めれば、2〜30点くらいのストックがあります。『のはらうた』関連のイベントやグループ展などに出品したり、ウェブサイトのために提供したものもありますが、まとまった形ではまだ日の目を見ていません。


「のはらうた」を描いた作品については自分の中でも大きな手応えを感じていて、2000年代の前半に自費で作品集を作ろうと思ったものの、いろいろな事情により叶わなかった経緯がありました。20年後の今、当時の作品をアーカイブしていこうと考えた時、一番最初に出したかったのがこのシリーズでした。時間をかけてプランを練り、くどうさんと版元の童話屋さんからも詩の使用についての了承をいただきました。



今回第1弾として刊行する詩画集『ぼくは ぼく』には、それらの中から最も初期に描いた作品を中心に収録しています。当時はあまり意識していませんでしたが、選んだ詩はどれも自分の心の中を映し出しているように感じられます。その中でもぼくの芯にある最も強い気持ちを代弁しているのが、表題作の「ぼくは ぼく/からすえいぞう」だと思います。


作品のほとんどは当時のままですが、一部に新しい要素を追加したり部分的な修整を加えています。作品集(ZINE)とミニレターペーパーのほかに、いくつかのグッズやジークレープリントの企画なども進めているところです。まずはSEE MORE GLASSを皮切りに、首都圏のいくつかのお店で展示を行いたいと考えています。状況が許せば、いつかは地方にも巡回するのが夢です。


今後は、「のはらうた」の作品の残りのストックをまとめた詩画集第2弾の制作も予定しています。

しなもん|Cinnamon Retrospective

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